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今日、久しぶりに長野市にある水野美術館に行ってきました。
栽培きのこメーカー「ホクト産業」の創業者、水野正幸氏(今年1月没)
が収集したコレクションを元に設立された、日本画専門美術館です。
横山大観など、近代以降の日本画家の作品が系統立てて収集されている、
なかなか充実した美術館です。
長野県出身作家の作品も多く、特に菱田春草の作品は飯田市立美術博物館の
コレクションに次ぐ良品が収集されています。

今日、この美術館で一番感動したのは、他でもない
非常口への誘導灯のサイン照明です。
通常は、出口方向に向かって走る人物がデザイン化された緑色で表わされ、
白い燈明に浮かび上がっています。しかもこのグリーン、かなり目立つ色です。
水野美術館の場合は、それが黒に近いモスグリーンで作られていました。
壁や床に設置されたその誘導灯が、日本画を展示した落ち着いた空間に
とてもマッチしています。
たまたま居合わせた学芸員に聞いたところによると、消防法との兼ね合いで
この色でぎりぎり許可されたのだとか。
いつからこのような心憎いセンスある誘導灯に変わったのか、
他の美術館でもそうなのか、これから注意して見てみようと思ったことでした。

で、その後足を向けたのが、戦没画学生の作品を展示する「無言館」でした。
別所温泉に近い、上田市塩田平を見渡せる丘の上にあるこのコンクリート造りの教会堂のような展示館の非常口誘導灯は、透明な濃いグレーのフィルムで覆われてほとんど目立たないような色になっていました。
これでほんとに誘導灯として許可されるものなのか、あまりに目立たないので疑問が残りました。

作品の展示と非常時の避難誘導という、相反する二つの課題を誘導灯として美しく解決して機能を満足させていたのは、水野美術館に軍配が上がります。
でも、こんな細かい部分まで美しく見せようというセンスが発揮されるほど、それだけ文化が成熟してきたのだと、そういう証拠を今日見つけた気がします。


NHKの日曜美術館で紹介された、白髪一雄の展覧会
「格闘から生まれた絵画」(6月14日まで)を観てきました
会場は、長野県安曇野市の豊科近代美術館です
美術館の庭には美しいバラが咲き揃い、今がちょうど見頃です

白髪一雄はアクション・ペインティングの先駆者として有名です
キャンバスを床に置き、その上に大量の油絵具を垂らして
天井からつり下げたロープにつかまりながら、滑走するように
足で絵具を動かし描きました
物質化していく絵具に、ダイナミックな動きの軌跡が残る
「重い」質感の絵画世界です
私が日頃描く、わたで描く三原色のパステル画とは
180度趣きの異なる、絵画世界です
これはこれですごいエネルギーを感じますし、感動します
でも、激しすぎて病院には飾れない絵ですね

この美術館には高田博厚の彫刻作品が常設展示されています
私は彼の肖像彫刻こそ、第一級の芸術だと強く思います
それはモデルとなった人物の精神性を抽出したかのような
強い内面の力を感じさせるものです
特に、ロマン・ロランやアランの肖像彫刻が魅力的です
しかし彼の人体トルソには、私はそれほど魅力を感じません
同じ市内にある碌山美術館の、荻原守衛の人体彫刻作品の方が
エネルギーを感じます

豊科近代美術館内のカフェで、いつものように
ケーキセットでお茶しました
ナッツとフルーツ、2種類のパウンドケーキ2切れが付く
珈琲セットがおすすめです
2人で出かけたので一人がセットを頼み、一人は珈琲だけで
分け合ってケーキをいただきましたが、これで充分でした
このパウンドケーキがすごくおいしいので、以前お願いして
売っていただいたことがありますが、菓子店のものではなく
スタッフが家で焼いているものでした



恒例(勝手にやっているわけですが)の東京美術館散歩、今月は
展示期間が14日(日)までとなったピカソ展を観に13日(土)に
長野新幹線に乗り出かけました。
サントリー美術館と国立新美術館の両方に行きましたが、
え、これしかないの?という印象で、なにか満足が薄かったです。

土曜日の収穫は、東京ちひろ美術館でポストカード専用の
紙製の額マットを購入できたことでしょうか。
50枚購入したので、これを来年2月の佐久総合病院での展示に使います。
作品はこれから追加制作して、パステル画のはがきだけで
壁面構成してみようかと考えています。どうなりますか....

今回の東京行きで、展示を観ることができて幸運だと思えたのは、
上野の森美術館で開催中の「レオナール・フジタ展」でした。
女性像やかわいらしい猫ばかりでない、力強い男性の群像表現や
最晩年の教会堂壁画などの作品群を観ることができ
とても印象的な展示に出会えたと感じました。
そしてぜひ、ランスの「平和の聖母礼拝堂」を訪ねてみたいと
強く思ったことでした。

あとはパナソニック電工汐留ミュージアムで開催中の
「アーツ・アンド・クラフツ≪イギリス・アメリカ≫」展も
前の巡回展示場所、埼玉県立近代美術館に行けなかったので
観に行きました。
アーツ・アンド・クラフツ展もピカソ展も、ヨーローッパの美術館で
もっと多くの優れた作品展示を目にした経験がある私には、
どうしてももの足りなさを感じてしまう内容でした。

何が不足していてそう感じるのか、それはもしかすると
企画展示する学芸員やスタッフが、本当にその作品に惚れ込んで
どうしても鑑賞者に伝えたいものがあって、展示しているのではないから
だからもの足りなさを感じてしまうのかもしれません。
優れた展示とは、熱い心が生み出してくれるもの、
それは作者の心と共に、キュレーターの心も観るものに
伝わる展示だと思うのです。
そういう展示に、出会いたいと願っています。

10月に見た中で、一番感動したのがこの展示でした。
11月3日が最終日だった、六本木ヒルズ森美術館のこの展示、
最近見た現代美術展の中で、最高の感動をもらった気がしています。

最初ポスターやチラシを見ただけのときは、かわいい内容なのかと
誤解していました。だって、バラされたぬいぐるみが壁に飾ってある
そんな写真が使われていたからです。
でも、実はもっと深い内容を伝えている作品でした。
とても宗教的な、祈りのような感じを、しかし日常の中の何気ない素材、
ゴミ袋や毛糸玉、本や服やぬいぐるみ、動物の標本などで構成しているのです。

展示の仕方の教科書のような、緻密な並べ方で、
事実、美術を学ぶ学生らしき若者が、メモを片手に記入しながら
熱心に展示を見ていました。
森美術館の今回の展示準備の映像が流されていたのも
すごくよかったです。

実は書籍原稿の執筆期間中にも、美術館散歩はおこなっていました。
10月に出かけた美術展は、五島美術館に国宝「源氏物語絵巻」と
横浜美術館の「源氏物語の1000年−あこがれの王朝ロマン」展に
出かけたついでに、横浜トリエンナーレの各会場にも足を運んだので、
その印象を。

現代美術って、要は自分が好きな作品に出会えるか否か、ということ。
一番好きだなあ、と思えたのは、勅使河原三郎の作品でした。
まだ、会期中なのであまり詳しいことは書けませんが、でもとにかく
美しい! と素直に感じられる、でもちょっと怖い作品です。
会場は日本郵船海岸通倉庫です。
もうひとつ好みの作品は、三渓園に展示されていた霧の作品です。
こういうのが本当の「環境芸術」なのだろうと思います。
あとはねえ、エロ、グロ、の気持ちの悪い作品や、何を伝えたいのか
よくわからないものが多かったです。映像作品はじっくり見る時間がなく
でも、そういう映像作品が多かったです。

トリエンナーレの展示会場、新港ピアのとなりに、東京藝術大学の
映像研究科大学院の新港校舎(旧新港旅客ターミナル)があります。
そこを会場にして、いくつかの大学の学生チームが作品を作り展示があったのは、
10月18日(土)、19日(日)の2日間だけでしたが、トリエンナーレ会場よりも
作品がよかったです。とくに武蔵野美術大学の学生チームの作品は秀逸!

ユニチャームにかけあって、女性の生理用品タンポンのプラスティック製
アプリケーター数万個を入手し、外側の壁面にそれを刺したように並べて
部屋がつくられた暗い一角があります。
つまり一人の女性が一生使うであろう数の生理用品の一部が壁面をつくり、
内側からライティングされ、アプリケーターの先端スリットから光が漏れています。
その壁に囲まれた中に、揺れると点灯する発光ダイオードの豆球が針金の先で
ゆらゆら揺れるものが無数に並んでいます。
暗がりの中のかすかな光が、女性の胎内の内と外の生命の営みのように見える
という作品でした。
これはとても素晴らしいアイデアだったので、きっとまたどこかで
展示されることがあるのではないかと思います。
武蔵野美術大学学生の力のすごさを見た作品でした。